• 2014年9月17日

    2014年度 特選受賞作品

      選  『私のよい帯』

    矢澤三枝子 (山梨県  四十九歳)

    矢澤三枝子さま

     

     よい帯って、どんな帯でしょうか。

     金銀に輝く豪華な袋帯。螺鈿細工や刺繍が施された帯や手描きの染帯。

     どの帯も、とっても素敵な帯。そして、とっても高額な帯。質の高い素材、作り手の高い技術。高額であるのは、当然です。

     でも、帯の値打ちって、お値段だけなのでしょうか。

     着物を着る時に、私が帯の事で一番思うことは、帯の締め心地です。しっかり締まっているのに苦しくない。長時間締めていても、ゆるまず崩れない。着物と帯の調和がとれて似合っているか、という点を大事にします。その帯に愛着があれば、言うこと無しです。

     これなら、お値段に関係なく、私にもよい帯が見つかりそうです。

     私のよい帯、それは成人式の振袖を買い求めた時に一緒に買った、袋帯です。朱色の地に、金銀の柄が織り込まれた、至って平凡な袋帯。正直言って、当時の私は、その帯に何の思い入れもありませんでした。

     ところが、着付けをお願いした美容師さんが、私の袋帯を「とても締め易い。その上あなたに似合っている。」と褒めて下さいました。

     その言葉は嘘では無かったようで、別の機会に他の方にも着付けてもらったのですが、やはり同じ事を言われ褒められました。

     ビックリしたのは、夫の母からも、この袋帯を褒められた事でした。義母は自分で着物が着られますが、他人への着せ付けも出来る人でした。親戚の結婚式に出席する為に、訪問着を着付けてもらった時の事でした。締め易い帯だ、良い帯だと義母に言われて、嬉しくなったのと同時に、私はこの帯によって、義母と深い絆で結ばれたと感じました。

     締め易さや似合っていること以上に、義母との思い出は、この袋帯に益々の愛着を感じて、私にとってよい帯となりました。

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