• 2014年9月17日

    2014年度 特選受賞作品

      選  『祖母の帯』

    小島のどか (北海道   二十八歳)

     小島のどか様

     

     「帯」という言葉で思い出すのは、亡き祖母の帯のことである。それは、源氏物語絵巻の模様の、とても綺麗な帯だった。

     祖母は、それを私の結婚式で着ける予定だった。普段から着物好きの祖母が、「孫の結婚式のために、新調したの!」と、嬉しそうに話していたそうだ。

     

     私の結婚式は、去年の5月に挙げた。幼い頃からおばあちゃん子の私が、どうしても祖母に花嫁姿を見てもらいたかった為に、東京に住む夫の両親には申し訳なかったが、私の地元の札幌で挙げた。

     

     私は、幼い頃から、よく祖母に「結婚とは良いものだ。」と聞いていた。祖母は、祖母自身が祖父と結婚した時のこと、(娘である)私の母を産み育てた時のこと、母が結婚し、(孫である)私や妹が産まれてからのこと等を、いつも嬉しそうに語ってくれた。私は、それを聞くのが大好きだった。

     正直に言うと、祖母の話は長かった。それに、毎回、内容もほとんど同じだった。でも、その話は、いつも私を幸せな気持ちにしてくれた。

     私は、祖母の話を聞く度に、自分がいかに、祖父母や両親から、多くの愛を与えられてきたかを感じた。そして、感謝の気持ちでいっぱいになった。普段の生活では忘れがちな愛や感謝の気持ちを、祖母の話で、毎回思い出すことができたのだ。だから、何度、同じ話を聞かされたって、その都度、意味のある大切な時間だったと思う。

     

     祖母は、私の結婚が決まった時、涙を流して喜んでくれた。そして、結婚式の出席を楽しみにし、例の帯を用意した。

     

     それなのに、結婚式まであと3ヶ月という頃に、突然、祖母の病気が発覚した。末期癌だった。そして、その数週間後、大好きだった祖母がこの世を去ってしまった。あまりにも急だった。

     

     結婚式の当日は、母が、残された帯を着けて出席してくれた。母は、祖母に花嫁姿を見てもらいたかった私の気持ちと、孫の結婚式を心待ちにしていた祖母の気持ちとの、両方を理解してくれていた。そのおかげもあり、結婚式はとても楽しく終えられた。

     

     この帯の思い出は、私にとって、今はまだ少し悲しい。だけれども、これからも絶対に忘れたくない。祖母との幸せな時間も、あの帯の綺麗さも、絶対に……。

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