• 2012年7月13日

    2012年度 特選受賞作品 その3
    『着たいと思ったときに』
    小田 純子さん(石川県)
    「振袖の帯って胸にかかるぐらいの高い位置で締めるから、おっぱいがクッションになってギュッと締めても苦しくならないよ。」成人式で初めて振袖を着るため緊張している私達に、着付けの先生は笑ってそう言った。
    周りの女の子達は「ふふふ」と笑ったが、私は全く笑えなかった。私にはクッションになるような豊かなおっぱいがないからだ。先生の言葉通り、胸の豊かな女の子達は帯をギュッとされても知らん顔で、綺麗な自分の着物姿に幸せそうな笑みを浮かべていた。私はというと、やっぱり「おっぱいクッション」がないことが災いしたのか、帯を締められたあとで一人だけ貧血を起こした。
    帯を締め直してもらい、成人式には無事に出席できたが悔しい思いでいっぱいだった。成人式の悔しさがきっかけとなり、私は着付けを習い始めた。おっぱいクッションがなくても綺麗に楽に着物を着たいと思った。
    ドキドキしながらはじめて着付け教室に行くと、首が長くてなで肩の私は「着物が似合う体型」だと教室のみんなから絶賛された。おっぱいクッションのエピソードを話すと、「なーん。大丈夫。着物はぺチャパイの人の方が似合うから安心しまっし。」と言われ、たくさんの人から 肩をバシバシ叩かれた。
    自分で帯を締めると手加減ができるので全く苦しくならず、習い始めて半年もすると楽に綺麗に着物を着られるようになった。
    さらに上半身が貧弱だと帯の柄が選び放題で、帯の柄で出したい部分を自由自在に中心に持ってくることもできた。ぺチャパイ万歳だ。そして自分で言うのもなんだが、みんなの絶賛どおり、私は着物が良く似合った。
    おっぱいクッションがなくて悔しかったことから知った着物の世界。今は負け惜しみではなく心から「おっぱいクッションがなくて良かったな」と思っている。
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