• 2011年7月8日

    2011年度 優秀賞受賞作品
    成人式のお供
    森 千恵子(福岡県)
    私の次女の成人式の思い出は、今でも家族の心を笑顔にしてくれます。成人の日が近づいた頃、娘が着付けを私にして欲しいと言います。私は嬉しい反面、帯をうまく結べるかしらと心配でした。それでもワクワクしながら帯結びの本を読み、順序を頭に入れました。
    当日の早朝、私は神棚や仏壇に娘の成長を感謝し、上手に着せられますようにと手を合せたのです。次女の髪を長女が結っています。鏡の中の姉妹の笑顔が私を幸せな気持ちにしてくれました。
    「お母さん、タスキにハチマキまでして…」
    長女が笑っています。
    「これくらい気合いを入れないと、帯は上手に結べないのよ」
    (メインの柄が、正面に納まりますように!)
    夫と長女が小物を私に手渡したり、帯を引っ張ったりと大活躍をしてくれました。晴れ姿が完成すると皆の拍手で、次女の笑顔が弾けます。娘を送り出すと、外は粉雪が舞い始めました。ですが私は汗だくで、心の中を温かい風が吹いているようでした。親子で協力して楽しい時間を持てたことを、嬉しく思いました。
    その日帰宅した娘が、
    「友達の中でも、一家総出で着せてもらったのは、私だけだった。羨ましがられたよ。お父さん、お母さん、お姉ちゃん、ありがとう」
    照れながらも、嬉しそうです。そして、思い出したように笑いだしました。娘は式典の会場で、見知らぬ婦人から呼びとめられたそうです。彼女は娘の両脇からそっと洗濯バサミを取り出しました。それは帯がずれないように押さえていて、取り忘れていたものでした。娘が朝の騒動を話すと、
    「一生懸命なご家族を持って、幸せなお嬢さんですね。帯はとてもきれいに結 べていますよ。おめでとうございます。」
    優しい笑顔で祝ってくださったのです。娘にとって成人の日は、家族の絆や人さまの思いやりにふれた良い思い出となりました。
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