• 2010年7月9日

    2010年度 特選受賞作品 その7
    『おばあちゃんの帯』
    高橋 直美さん(宮城県)
    私の帯にまつわる話は、月並みに成人式から。
    十九歳のとき、成人式の振袖を買いに母と双子の姉と行ったのがきっかけ。 呉服屋で「振袖・帯・小物セット」を姉と二人であーでもない、こーでもないと、話し合い。 双子だからと何かとお揃いが多かった私たちは、「振袖は絶対にかぶらないものを!」と思っていたのだ。
    姉は黒地に蝶の模様、金の豪華な帯セット。私は桃色に紫の花柄、カラフルな帯セットをチョイスした。自宅に帰ると祖母が出てきた。
    「古い帯あんだけど、どっちか締めねぇか?」
    母は「今、二人で悩みに悩んで選んできたから…」とやんわり断った。
    「どんな帯だったのかな~おばあちゃんの帯…」と思ったまま成人式を迎えた。
    早朝、美容院で支度をしていると「お姉ちゃんのほうの帯、いいわね 〜!」と着付けを担当している美容師さんが言う。式後、方々の親戚や近所にお披露目に行っても「お姉ちゃんいい帯ね」と言われ、私の帯はほとんどスポットライトを浴びなかった。
    「ま、セットで買ってもらった帯だからしょうがないか!」と思って、私の成人式は終りました。
    それから2年、めでたく結婚することになった私。 結納は私の希望で実家で行うことにして、衣裳は成人式ぶりの振袖。 結納の日が迫った夕暮れ、祖母が私のところに来て、
    「古い帯なんだげっと、みねぇか?」祖母が何度も言うなら一度くらい…と思い、祖母の部屋へついて行く。古い衣裳箪笥からレトロな畳紙、つよい樟脳の匂い、
    「この帯はね~、あんだの曾おじいちゃんが、ばあちゃんの娘時代に買ってくれたんだ~。んでもな~忙しくて一度もつけなかったんだぁ」
    金の地に、茜色と水色の牡丹柄、とても50年前のものには見えなかった。戦後の大変な時代、田んぼ畑で仕事をするのが精一杯。着物を着る余裕なんてなかったんだな〜。
    「決めた!おばあちゃん、あたし結納の時、これ締めるよ」祖母はにっこり笑ってくれました。
    結納当日、着物は自宅で母が着付けてくれました。
    「はじめからセットだったみたい」と思うほど振袖との相性は抜群!
    和やかに行われた結納、終ったあとに 「この帯、結婚式もしめたいな〜」っと思ったのです。
    結婚式は神前式、白無垢を考えましたが、私は祖母の帯に合う、祖母が結婚した時代のような黒の大振袖を着てみたい!
    近くにアンティークの着物屋さんは無かったので、インターネットで探すことに・・・。数週間探し続けて、やっと「ピン!」と来る昭和初期の花嫁衣裳を発 見。即購入を決意しました。昭和初期の黒地の花嫁衣裳で、鶴、松、梅の花などなど豪華な着物。祖母の帯 ともピッタリでした。
    しかし、結婚式直前に祖父が急逝。結婚式はキャンセルできないので挙式はしましたが、祖母は欠席。
    後日、出来上がった写真を見せたとき、自分の髪で日本髪風に結い上げ、レトロな花嫁衣裳、そして祖母の帯。
    「ほんとに昔のお嫁さんだ〜」っと言いながら嬉しそうに笑ってくれました。
    あんなにお揃いが嫌だった双子の姉も 「私も結婚するときは同じ帯しめるから」と決めました。 いつになるのか楽しみです。
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