• 2010年7月9日

    2010年度 特選受賞作品 その3
    『ルリハコベの帯』
    沖田 美央さん(大阪府)
    誰もが特別な思いを秘めているであろう 「初めての帯」、それが、私にとっては〈ルリハコベの帯〉である。
    箪笥から畳紙をそっと取り出すと、凛とした気持ちになる。洋服をクローゼットから取り出す時には感じられない気分だ。紐を解いて、帯一面に咲いた花を目にすると、初めて出会った時の感動が鮮やかによみがえる。
    「スカーフみたい!」というのが、第一印象だった。濃紺地にマーガレットを思わせる白い花が咲き、細い葉は、美しいグラデーションを描いている。その隙間を埋めるように、ピンク色の小さな花(ルリハコベ)が顔を向けているのだ。
    聞けば、イギリスの詩人でデザイナーでもあるウィリアム・モリスのデザインがモチーフとの事。「和」を感じる帯が並ぶ中で、ヨーロッパの雰囲気を併せ持つ帯は、私の目に、どうしようもなく魅力的に映った。
    また、帯が出来上がるまでの工程は、初めて見聞きすることばかりで、驚きの連続であった。養蚕業の方の仕事ぶりは、まるで子育てをしているように愛情深く、長い歴史の中で構築されてきた染色や織りの技術の高さには感心するばかりだ。
    一本の帯は、それらを伝承されている職人の方々の手によって、ようやく完成した「世界にただ一つの作品」なのだ。
    私は、勢いよく清水の舞台から飛び降りて、〈ルリハコベの帯〉を手に入れることにした。
    自分の手元に届けられるまでに、どれくらいの時間や人の手を介してきたのだろう。きっと愛情がたっぷり込められているのだ。・・・思いを巡らせると、とても豊かな気持ちに包まれる。手に感じる絹の重みからは、職人の方々の誇りや想いが伝わってくるようだ。
    「ありがとう。大切にします。」これからも、心を添えて帯を締めよう。
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