• 2009年7月10日

    2009年度 特選受賞作品 その8
    『四〇年ぶりに舞う蝶々』
    森谷美雅子さん(茨城県)
    「みかこちゃん、お着物よく着るんでしょう?」
    お正月に主人の実家に帰省した時に義母からこう聞かれました。茶道を習っている私は毎週のお稽古を着物で通っているので、そう答えると義母は嬉しそうにたとう紙が何枚も入っている引き出しを持ってきました。
    「お嫁に来るときに持ってきたものなんだけど、着てくれる?」
    と言って、次々にたとう紙を開いて見せてくれました。
    結婚2年目とあって、主人の実家というとまだ少し緊張する私でしたが、義母が思い出話とともに広げてくれる着物を見るうちに、ついつい膝は前にでて話も弾みました。義父にも「持って帰ってたくさん着なさい」と背中を押され、ありがたく頂いて帰りました。
    そして、お初釜の日。義母が成人式に結んだという帯を、晴れの日に私も結ぶことにしました。金色の地に蝶が舞う、華やかでどっしりとした袋帯です。合わせた着物は、私がお嫁入りの際に両親が作ってくれた紺のぼかしに花模様の訪問着。双方の両親からの気持ちがいっぱいに詰まった晴れ着で、私自身着ていてとても誇らしく思いました。2年前に作った着物に、四〇年前の帯が不思議にしっくりとなじみます。
    母に手伝ってもらいながらいつもよりも丁寧に着付け、ポーズをあれこれと悩みながら撮った写真を義母に後日みせると、とても喜んでもらえました。
    「娘がいないからもう着る人もいないと思っていたのに、着てもらえてよかった」と。それ以来、いただいた着物をお稽古などで着るたびに、撮った写真を携帯で送っています。すると義母からまたメールで返事が返ってきて・・というやりとりが増えました。今では私が一人で泊まりに行くほどです。
    これからも義母と私の思い出のつまったこの帯を大切にして、よそゆきとしてずっと結んでいこうと思います。
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